汐見稔幸先生の講演を聴き、ウィズチャイルドの保育実践と重ねてみる

日本こども育成協議会総会の基調講演にて、東京大学名誉教授の汐見稔幸先生の講演を聴きました。「今我々は人類の歴史をゆるがす大転換期に居る」とのお言葉から始まり、大きく2つの現状を語られました。

ひとつは、世界の富豪26人とその他の全人類の総資産が同じという今まで体験した事のない貧富の差について。世界中で起きている宗教的争いやテロリスト、こういった背景には絶対的貧困が大きく影響している。毎日4万人のこどもが餓死している。この先、貧富の差は更に拡大し戦争も拡大しアメリカに迎合している日本も近い将来テロの標的になるかもしれない。空想の話ではない。と前置き「市民税や都民税などの税金は何のために払っていますか?」と私達に問いかけた。公共の物を共有し、共に生きるため。みんなで支え合って生きるためでしょ。ではなぜ【地球税】はないのだろうか?全地球人が自分の収入の0.01%の地球税を払ってくれたら、毎日餓死する4万人のこども達を救えないだろうか?そもそも、これ以上地球を破壊し汚してしまったら人類は確実に滅んでしまう。物事を全て地球視点で見て考えて、この先環境破壊や戦争はもう絶対にしない、という強い意志の人間が未来にあふれなければならない。私達は未来を生きるこども達にどんな大人になってもらいたいのか?その為に何ができるのか、その答えは決して誰かが与えてくれるものではない。人類が初めて体験するほどの貧富の差をどう解消するかなんて誰も答えを持っていない。と話されました。

もう一つは、人類は右肩上がりに爆発的に人口を増やしてきた。しかし今初めて減少を経験している。人類史が始まってかっらずっと人口は増えてきた。あらゆる制度政策は、人口増加あるいは維持を大前提に作られてきている。人口が減っていく社会を経験した事がないから、今どうしていいかなんて誰もわからない。もはやGDPや経済成長を幸福度の指標とすること自体がおかしい事に気づかなければならない。発想の転換期なんだ。人口増加の時代にはその分食料もどんどん作らねばならない、焼き畑をおこない環境を破壊し、食の大量生産を行なってきた。住居もどんどん増えた。でも今は空き家問題がどうしようもないくらい問題化してきている。でも誰も手を付けられない。今の法律や制度の影響で放置されることになる。例えば法改正を行ない、自治体が空き家を買いとるなどして持ち主の税負担免除などし、新たに自治体の所有地としてそこに都市農園を作り、農薬を使わない自然農業をおこなう事もできる。そうやって自分達の未来を自分達で考えて創り変えていくこともできる。田舎の都市化で発展したのがこれまでの時代、これから先は都市の田舎化をしていく事になる。そういう発想力やアイデアで、誰も答えを知らない人類が経験した事のない未来を生きていかなければならない、そういう答えのない時代を生きる人間を育てていかなければならない。と話されました。

 

これからは「右肩下がりでも幸せな哲学」を新たに生み出す時代です。

とお話された後、本題として「ではこれから私達はどういう保育をしていけばいいのだろうか?」とぜひ議論を重ねてもらいたいとし、徹底的に遊びこむ事の重要性をうたわれ、大事な3つのキーワードをくださいました。

①体を使う。技を刻み込む自ら励んで身に着ける喜びや達成感。

②頭を使う。考える。話し合う。生み出す喜びを味わう。

③共感能力。人を愛するという事。意図的に対話できる仕組みなど。

 

これからの未来はAI社会、その便利の先に人の知恵を絞ったり体で覚えたりする幸福感は残るのでしょうか?それを誰が考えてくれるのでしょうか?

AIのさらにその先の時代、それはきっと「手づくり社会」です。食うために一生懸命働いてきた時代、便利が増え効率化されれば通勤時間や労働時間は減っていきます。その分の人生の時間を私達は生きる豊かさを生み出すことを求めていきましょう。と締めくくられました。(※自分が聞いた記憶で書いていますので表現は多少違う点もあります。)

 

ウィズチャイルドでは5年前にコミュニティをつくった。つどいの木をみんなで移植しこども中心の居場所を創った。そして3年ほど前から「環境教育」をウィズチャイルドの保育ベースに取り込み始めた。それは、地球にある全ての命と物質は自分の命とつながっている事を知り、地球にやさしい人間を育てる必要を感じているからである。また自然の中でたくさん動く事で、基礎体力の向上と環境愛を同時に育むことを目的としている。そして個を尊重し万物への愛を育むモンテッソーリ教育を軸としている。方向性は間違っていない。しかしまだまだやるべき事は限りなくあることをあらためて学んだ。

そして昨年から「療育」の世界との連携に力を入れている。全ての命や個性が尊重され、多様性がより認められサポートされ、調和し合って支え合って生きる社会を目指すためには、こどもの発達への理解を専門家のみならず全ての保育者や子育て世代がもっと深め、その知見が日常生活に活かされるべきと考えるからだ。私達保育業界は今まさに変革を遂げ、保育所の社会的役割を再構築し、何を優先的に取り組むべきかを現場のスタッフ達や保護者と共に見直す時代にきている事は間違いない、とあらためて染み入った今日でした。