福祉ネットワークでこども子育ての包括的支援の可能性を考える

保育業界は離職率が高い。なぜか。理想と現実のギャップを感じるからである。では何がギャップか。処遇の低さも確かにあるがそれは入職時に知っている事なので、実は離職の本質的理由ではない。もちろん様々理由はあるが、最も大きいと思われるギャップ、それはこどものお世話をする自分を夢見て入職したはずが、保護者の子育て支援をしなければならない事。え?そんなわけない、と思うかもしれないが、現実に求められる仕事において保護者支援は思っていた以上の比重を占める事を知る。保護者支援の大変さを入職前に実感する事はまずない。見学でも面接でも体験でも知る事はできない。見せる側も見る側も対こどもの世界にしか目が行かない。だから実感ないまま入職してしまうのだ。しかしながら新保育所保育指針でも「子育て支援」という新たな項目がまとめられるほど保育所の社会的役割として明記され、保育士を目指す者にとっては主要な仕事となっている事も事実である。保育士になるには、こどもの育成に加え保護者支援の仕事に携わるという覚悟が必要なのだ。

 

と言いながら一方でこういう想いもある。保育士の再定義だ。つまり「保育士」はなるべくこどもに集中できるように仕事を切り分けるという考え方である。こどもの身の回りのお世話専属のお仕事にしてしまう。その代わり給与はさほど高くない。一律保育士と名乗らず、名称もお世話係は「こども生活アシスタント」とし区別する。保護者支援や発達などの専門的ケアを行なう者は「子育て支援士」とし組織の上位に配置する。子育て支援士は発達支援や面談ができたり、環境指導や保育計画に沿った実践指導ができ、専門資格を有して園づくりを主体的に行なうため給与も高い。

これは考え方の一例であるが、フランスではそのような分業制度が確立されていると聞く。実際に訪れたイタリアのレッジョエミリアでもそのように組織されていた。

日本では保育士不足が深刻化する中、ただ経歴が長い者が無条件に優遇されたり、対大人の仕事が苦手だからこの業界に来た者が資格者だというだけで重宝されてしまう実態もあり、十把一絡げに「保育士」としてそのすべての処遇改善を行なう事にも疑問を投げかけたい。現状の体制では業界全体の質の向上は困難である。社会のひずみによって生じたあらゆる子育て関連の課題が、何でもかんでも保育士や保育所に求められている事も事実、チーム内でも明確な役割分担や目標設定を行なう必要性が高いと感じる。内部での分業を進める一方、地域全体で子育て支援に取り組む必要性はもっと高いと感じる。ウィズチャイルドでは、療育、医療、環境教育の各専門分野とのネットワークづくりに力を入れている。こどもの豊かな育ちの包括的支援を実現し、保育士の真の働きやすさを生みだす事を目的として取り組んでいる。民間の知恵を集めて取り組むが最終的には行政支援も欠かせない。周囲にメッセージを発信しながら、小さな成功例を築き上げるしか今はないと考える。

道のりは険しいが更なる高みを目指す。